札幌地方裁判所 昭和47年(ワ)656号 判決 1973年9月28日
原告
吉田治志
右訴訟代理人
宮永廣
被告
株式会社札幌マツダ
右代表者
山口潔
被告
池本隆一
右両名訴訟代理人
中島一郎
主文
1 被告両名は原告に対し各自金三〇万円及びこれに対する昭和四七年六月一〇日から支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 原告は被告会社に対し金一万六、五〇〇円及びこれに対する昭和四七年四月一五日から支払ずみにいたるまで年六分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用のうち昭和四七年(ワ)第六五六号事件について生じたた分は、これを七分し、その一を原告の、その余を被告両名の各負担とし、昭和四七年(ワ)第六七〇号事件について生じた分は全部原告の負担とする。
5 この判決は、第1、3項につき仮に執行することができる。
事実
第一 昭和四七年(ワ)第六五六号事件
一 申立
(一) 原告
1 被告両名は原告に対し各自金二〇〇万円及びこれに対する昭和四七年六月一〇日から支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決ならびに第1項につき仮執行の宣言を求める。
(二) 被告両名
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
二 主張
(一) 原告(請求の原因)
1 原告は昭和四五年七月から肩番地で「八ちやん寿司」という屋号で寿司屋を経営している者であり、被告会社は、自動車の売買、賃貸、修理等を業としている会社であり、被告池本は後記本件不法行為たる昭和四六年一二月一八日当時、被告会社の常務取締役の地位にあつたものである。
2 原告は、昭和四六年三月中旬ころ、板金ならびに自動車修理工場を経営する「札幌モータース」こと訴外佐藤耕一から、同訴外人が被告会社から代金完済まで所有権を留保する約定で買い受けた普通乗用自動車マツダルーチェ(札一〇・九六)(以下本件車両と略称する。)の売渡しを受け、その引渡しを受けて以後これを自家用車として占有、使用していた。
3 不法行為の発生
(1) 昭和四六年一二月一八日午後四時三〇分頃、被告池本は、被告会社麻生営業所長である訴外中村俊一と共に原告方を訪れ、原告を同人方付近に所在の被告会社琴似支店事務所に同行したうえ、同所で原告に対し「本件車両は、被告会社が訴外佐藤に対し代金四四万三、一七〇円で所有権留保のうえ月賦販売したものであるが、月賦金支払のための佐藤振出の約束手形が残代金額約一七万円を残して不渡になつているので原告に右佐藤の残債務を肩代りしてもらいたいこと、しからざれば、本件車両を被告会社に引渡してもらいたい」旨の申入をした。
これに対し原告は、「本件車両が被告会社に所有権を留保されていたものであることは知つていたが、それについては佐藤が責任をもつて残月賦金の支払を行う旨の確約があつたので買い受けたもので、原告としても現実に代金として二五万円の出損をしていること、本件車両は未だ車検の有効期間が一年以上もあり価格も三五万円相当はすると思うので、むしろ被告会社の方で原告出捐の二五万円を負担して本件車両を引取つてもらいたいこと、いずれにしてもこれについては、原告・被告会社・佐藤の三者で話合のうえ解決したいと思うが、若し被告会社がどうしてもその意思を通す意向の場合は、正式に法律的な手続を踏んでもらいたい」旨を主張したところ、被告池本は、「あの車は、マツダの車だから返すも返さないもない。車は自動的にこちらにもらわなければならない。来年一月早々からこういう交渉はできないから今月中にきりをつける。とにかくもう待てない。」と高言して高圧的態度を示したため、原・被告池本間の話合は物別れに終つた。
(2) 同日六時三〇分過頃、原告は前記事務所から帰宅したが、被告池本の言動があまりにも強硬であつたことを想起し、本件車両のいわゆる「引揚」を実行されかねない事態を危惧したので、原告の妻訴外吉田芳江(以下「芳江」と略称する)に本件車両を他所に移動するようにいいつけた。
(3) そこで、芳江は本件車両のエンジンキーを所持して同車を駐車させておいた札幌市西区山の手五条一丁目森田八重方前路上に赴いたところ、既に被告池本も同所に来ていた。
そこで芳江が、本件車両の運転席ドアを開けようとしたところ、被告池本は「その車動かしたら駄目だ、キーを寄こせ」と言うなり同女の右腕をつかんでこれを阻止したため、そこで芳江・被告池本間に、
芳江「どうして自分の車を動かしちやいけないの」
池本「これはマツダの車だから今引き揚げていく」
芳江「それは絶対にさせないわよ、貴方がたが法的手続をとつてきたのなら別だけどそれ以外は渡さないわよ」
池本「キーをよこせ」
芳江「絶対に渡さわないから、自分の財産を守る権利は私にもあるのだから」
池本「これはマツダの名義だから今日は絶対に引き揚げさせてもらう」といういい合いが行われる共に、被告池本が芳江のエンジンキーをとりあげようとしたためつかみ合いの状況となつた。
(4) すると被告池本は、「そんならガラスを割つてでも持つていく、ナンバープレートも全部はずすぞ。」というやいなや、同所に居合わせた前記中村俊一に対し「おい中村、お前壊せ、何しておるんだ早く壊せ」と命じたが同人がこれに従わないのを見るや所携のドライバーをもつて本件車両の右側前部三角窓を殴打し、通行人である訴外橋脇悦雄と共にこれを阻止しようとした芳江を突き飛ばし前記ドライバーを同女にふりまわしたため、たまりかねた同女が「怪我するから危いからやめなさい。警察を呼ぶわよ。」といつたところ、被告池本は、「警察なんて呼んだつてよい。俺達はいつもこうやつて車を引き揚げていくんだ。だから呼びたかつたら呼べ。」と暴言を浴せたあと、本件車両のナンバープレートをはずすべく同車後部にまわると共に、その場にいた前記中村に対し「早く皆んな呼んでこい。」と命じた。
(5) やがて、現場に右中村が被告会社琴似支店従業員佐賀井茂外三名を同行してきたが、そこで被告池本は、右中村らに対し「お前達ナンバープレートをはずせ、早くガラスを割れ。」と命じたため、中村が路傍の石をもつて本件車両の運転席三角窓々ガラスを破壊したところ、被告池本は、三角窓に右手を入れて同車運転台から車両検査証および保険証を奪取し、ついで「車を動かなくしてやる。」と言うや同車のボンネットをあげて中の配線をひきちぎり同車を一時運転不能に陥らせた。
(6) ついで被告池本は、前記佐賀井に本件車両のナンバープレートをはずさせたあと、同人および中村らに対し「お前ら車を出せ。」と命じ同人らと共に同車を押してその場から道路上へ搬出しようとした。
その頃、原告は妻芳江の帰りがおそいのをいぶかりこの場に来ていたが、右被告池本らの車両引場行為をみておどろき、「やめろ」と言つて妻芳江と共にこれを阻止しようとしたところ被告池本らは原告らを突きとばしたため、そこで原告・芳江と被告池本・中村・佐賀井他従業員三名間におよそ一〇分間程度の叫喚もみ合いの状況が生じた。
(7) この頃には、周囲には通行人をはじめとして付近民家の人が何十人も参集してきていて、右原・被告間の争いを見分する有様であつた。
そこへ、近所の者がした一一〇番の通報により、札幌西警察署琴似本通交番勤務の警察官四名が現場に急行して被告池本らの行動をとりおさえ事情聴取にあたつたため、同人らも漸く暴力的行為を中止してその場を退去した。
(8) 翌々日である同月二〇日早朝、被告池本は、前記3の(3)記載の森田方前路上に駐車中の本件車両を、原告に無断で密かにその場から持ち去り原告の占有を奪取した。
4 責任原因
(1) 以上、被告池本が、原告の本件車両に対する適法な占有を法律上の手続を経ずに不法に奪取しようとする際に行つた行為、ならびに占有を不法に侵奪した行為は、犯罪行為をも構成するもので、民法七〇九条の不法行為に該当する。よつて同被告はこれにより原告のこうむつた後記損害を賠償する義務がある。
(2) 被告池本は、被告会社の常務取締役であり、同会社の業務執行として本件各行為を敢行したものであるから、被告会社は、民法七一五条により、被告池本の行為につき損害を賠償する義務がある。
5 損害
(1) 原告は、被告池本の違法かつ不当な前記本件車両引揚行為に対し、原告の妻芳江と共にこれを阻止防衛しようとしたが、その際屈強な壮年の男である被告池本他四名の者にかこまれて暴力的行為をふるわれ肉体的被害を受けると同時に著しい精神的屈辱を感じてその名誉を侵害されるとともに、事情を知らない近隣の者ならびに通行人からは一見原告が本件車両を不法入手したがために被告池本らの行動を甘受せざるを得ないとの感を抱かれ、これにより原告ならびに同人の経営する店に対する信用を著しく毀損された。
(2) 原告は従業員四名を雇用し年間売上高約一、〇〇〇万円をあげる前記寿司屋を経営するものであり、一方被告会社は東洋工業株式会社の札幌市周辺における自動車販売の総代理店を主業務内容とする資本金三、〇〇〇万円の株式会社であり、被告池本は同社の常務取締役である。これらの事情を総合的に考慮するならば、原告の被告らに対する慰藉料の額は金二〇〇万円を相当と考える。
6 結論
よつて原告は被告両名に対し金二〇〇万円及びこれに対する弁済期経過後の昭和四七年六月一〇日から支払ずみにいたるまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(二) 被告両名(請求の原因に対する認否)
1 第1項の事実は認める。
2 第2項の事実中、原告が訴外人佐藤耕一から本件車両を買い受けたことは否認、その余は認める。
3 第3項(1)の事実中、原告池本に対して「本件車両が被告会社の所有権を留保されていたものであることを知つていた」とか「買い受けたものである」とか「車両の有効期間が一年以上もある」とか「価格も三五万円相当すると思う」と述べた事実および被告池本が物別れ直前に原告に対して述べた時の様子が高言して高圧的態度を示した事実は否認する。その余の事実は認める。
4 第3項(2)の事実中、原告が前記事務所を退所した時間は不知。被告池本の言動が強硬であつた事実は否認する。その余の事実は認める。
5 第3項(3)の事実中、被告池本が「キーを寄こせ」と述べたこと、被告池本が芳江の右腕をつかんで同女が本件車両の運転席ドアを開けようとしたのを阻止したこと、芳江が「自分の財産を守る権利は私にもあるのだから」と述べたこと、被告池本が芳江の所持するエンジンキーを取りあげたこと、つかみあいの状態となつたことは否認する。その余の事実は認める。
被告池本が芳江に述べたのは「キーを寄こして貰いたい。」との言辞であり、また被告池本と芳江とのやりとりについては、被告池本が本件車両についているキーを取ろうとしたところ、芳江が被告池本の手をはねのけてキーを取りあけ、ドアに鍵をかけ、キーを持つたというのが真実であり、被告池本はそれ以上のことではできなかつたものである。
6 第3項(4)、(5)、(6)の事実中、被告池本が中村に被告会社の従業員を呼びにやり、従通員が現場に来たこと、同被告が右従業員らにナンバープレートのとりはずし、および三角窓の破壊を命じさらにボンネットを開けて中の配線の一部をはずすように命じたこと、三角窓の窓ガラスが破壊され、本件車両のボンネットがあけられて中の配線の一部がはずされ、同車が一時運転不能となつたこと、ナンバープレートがとりはずされたこと、被告池本が三角窓から手を入れて車検証をとつたこと、前記従業員らとともに本件車両を押してその場から道路上へ搬出しようとしたこと、現場へ原告がやつてきたことは認める。その余の事実は否認する。
なお請求の原因第3項、(4)、(5)、(6)の事実は、その順序が違い、次のようなものであつた。
(1)被告池本が芳江に対しキーを貰おうと申し出たが芳江がドアに施錠し自からキーを所持したため貰うことができなくなつた。(2)中村と二人で車を移動させようと努力したが動かなかつた。(3)二人では車の移動ができないので被告会社の従業員を呼びにやり一緒に押したがこれを阻止された。(4)そこでドライバーで三角窓を割つて中から車検証を取り出し被告側で保管した。(5)車両のボンネットをあけて電気廻りの配線の一部をとらせた。(6)ナンバープレートをはずさせた。
被告池本がこのような行動をとつたのは、芳江の側で本件車両を隠匿する虞があつたため、この時期を失したら車の引揚が不可能となると判断したからであり、その際芳江は、「車を川に捨てる」とか「めちやめちやにする」とか述べたものである。
7 第3項(7)の事実中、通行人が集まつてきたことおよび警察官が来たためその場が一旦おさまつた事実は認める。その余の事実は否認する。通行人はせいぜい五、六人であつた。
8 第3項(8)の事実中、本件車両を引き揚げた事実は認める。
9 第4項は争う。
10 第5項の事実中、原告の経営内容は不知。被告会社の経営内容、資本金、被告池本がその常務取締役である事実は認め、その余の事実は争う。
11 第6項は争う。
第二 昭和四七年(ワ)第六七〇号事件
一 申立
(一) 被告会社
1 主文第3項と同旨
(二) 原告
1 被告会社の請求を棄却する。
2 訴訟費用は被告会社の負担とする。
二 主張
(一) 被告会社(請求の原因)
1 被告会社は自動車とその部品販売およびその修理を業としている会社である。
2 被告会社は昭和四六年一一月二〇日本件車両について原告と次のとおり修理および売買の合意をなし、その引渡しを完了した。
(1) クラッチオーバーホール、チエンアジャスターを取替え、タイヤ四本を交換し、その修理代金を金九、〇〇〇円とする。
(2) クラッチデスク一枚、チエンアジャスター一個、不凍液一缶デスキヤップ一個を代金七、五〇〇円で売渡す。
(3) 右代金支払日を昭和四六年一二月一〇日とする。
3 よつて被告会社は原告に対し金一万六、五〇〇円及びこれに対する弁済期経過後の昭和四七年四月一五日から支払ずみにいたるまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
(二) 原告(請求の原因に対する認否)
請求原因事実はすべて認める。
第三 証拠<略>
理由
一昭和四七年(ワ)第六五六号事件につき
(一) 請求の原因第1項の事実、第2項の事実(ただし、原告が訴外佐藤耕一から本件車両を買受けたとの点を除く)、第3項の事実中、被告池本が原告主張の経緯で本件車両の引渡しを要求したところ、原告が訴外佐藤が責任をもつて月賦金の支払をする旨確約したので買受けたものであつて、これについては原告、被告会社および訴外佐藤の三者の話合で解決したい、もし被告会社がどうしてもその意思を通そうとするなら正式に法律的な手続を踏んでもらいたい旨要求し、これに対し、被告池本が本件自動車は被告会社のものであるから返すも返さないもない。車は自動的にもらわなければならない。とにかく待てないと答えてこれを拒否したため話合ができなかつたことは、いずれも当事者間に争いがない。
(二) そこで本件車両の引揚げと右引揚げに際して行なつた被告池本らの行為が不法行為を構成するか否かについてみるに、被告会社が昭和四六年一二月二〇日本件車両の引揚げを実行しその占有を原告から奪つたことは、当事者間に争いがなく、右引揚げより先の同月一八日夕刻、被告池本が被告会社の従業員である中村らと一緒に本件自動車を原告の駐車所から押して移動させようとしたが果さなかつたことから、みずからまたは従業員らに命じて、ドライバーで三角窓を割つて車検証を取りあげボンネットを開けて電気の配線をとらせ、さらにはナンバープレートをはずさせるなどして自動車の走行を一時に不能ならしめたことはいずれも被告両名の認めるところである。しかして、<証拠>を総合すれば、被告池本らが右のような行為に及んだのは、原告の妻芳江が原告からの指示で本件車両を移動さすべく駐車場所に赴いたところ、たまたま、被告池本らが引揚げを実行すべく臨場していて右芳江から自動車のキーを取りあげようとして拒否されたことに基因するもので、被告池本らの前記行為は、右芳江およびあとから現場にやつてき来た原告らとの間で大声をあげたりもみあいをするなどの騒ぎの中で一方的に強行されたこと、右の騒ぎは一五ないし二〇名の近所の人々らの目撃のもとに約三〇分間続いたが、警察官がかけつけて制止したため漸く治まり、被告池本らも引揚げを一旦中止したこと、ところが、翌々日である同月二〇日、被告会社は、前記のとおり本件車両引揚げを実行しその占有を原告から奪つたが、これについては原告の承諾を得ておらず法律上の手続も履践していないこと、原告は、被告池本らの行動をまのあたりに見て立腹しただけでなく、近所の人々が大勢目撃する中であたかも本件車両を不正に入手したため引揚げを強行されるようにみられたのではないかと思い羞恥心を覚えたことがそれぞれ認められ、被告池本本人尋問の結果中右認定に反する部分は信用できない。
もつとも、右池本の供述によれば、一二月一八日の話合の際、被告池本が原告に対して、本件車両を一日だけ被告会社に保管させて欲しい旨要請したが、原告はこれを拒否して席を立つてしまつたうえ、原告の妻芳江は、駐車所において、自動車を被告に渡すくらいなら川に投げこむかバラバラに壊してしまう旨述べたことが認められるが、原告の行動自体はもちろん、右芳江の言動にしてみたところで、<証拠>を総合して考えると前叙の経過により被告池本らが本件車両の引揚げを強行した一連の過程の中において芳江が、単に行きがかり上そのような発言をしたという以上の意味をもつものではないと認められるのであつて、これらは、いまだ法律上の手続によらないで自力をもつて本件車両の返還をはかることが正当化される理由とはならない。
(三) 以上の事実によると、本件車両の引揚げ自体が原告の占有を侵奪する違法なものであるだけでなく、右引揚げのためにとつた被告池本らの行為もまた社会通念上是認される限界をはかるかに超えた態様のものであり、故意による不法行為を構成することがあきらかである。そして被告池本が当時被告会社の常務取締役であつたことは前記のとおり当事者間に争いがなく、前記一連の不法行為が被告会社の業務につきなされたものであることは<証拠>によつて明らかであるから、被告らは各自本件の不法行為によつて原告に生じた損害を賠償する義務があるものといわざるをえない。
(四) 損害
<証拠>によれば、原告は本件車両を訴外佐藤から二五万円で買い受けてこれを寿司屋の営業用として使用していたところ、前述のような騒ぎのすえ一方的に引揚げを強行されてしまつたこと、原告は、右の騒ぎにおいて被告池本らの行動によつて信用を傷つけられ羞恥心を覚えるなどの精神的苦痛をうけたことが認められ、これに当事者双方の営業内容、本件に至る経過その他審理にあらわれた一切の事情を総合すれば、被告らが原告に賠償すべき慰藉料額は、金三〇万円をもつて相当と認める。
(五) よつて原告の本訴請求は、被告両名に対し慰藉料として各自金三〇万円及びこれに対する弁済期経過後の昭和四七年六月一〇日から支払ずみにいたるまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから正当としてこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却することとする。
二昭和四七年(ワ)第六七〇号事件につき
請求の原因事実については、すべて当事者間に争いがない。右事実によれば、原告に対し金一万六、五〇〇円及びこれに対す訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和四七年四月一五日から支払ずみにいたるまで商事法定利率六分の割合による遅延損害金の支払を求める被告会社の請求は正当であり、これを認容することとする。
三結語
よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用し、主文のとおり判決する。
(原島克己 太田豊 末永進)